バイヤー、スタイリストとして世界中を飛び回り、
様々な国と出会ってきた大原真樹。
訪れた国のなかには女性なら誰しもが夢見る都市もあったはず。
けれど彼女を魅了したのは異国情緒あふれるモロッコ。
大自然と人々の活気に満ちている国だ。
そんなモロッコに心奪われ、2006年に大原氏は独立。
年間100日以上をモロッコで過ごす彼女だからわかる
魅惑の国モロッコに迫る!
モロッコに通いだしたきっかけは何ですか?
モロッコに興味をもったのは、当時アパレル店の店長をしていた27歳のとき。その店はラグやライト、アートなど、インテリアすべてがモロッコでしたし、扱っていたモロッコ雑貨もとても素敵でした。それを毎日見るうちに、いつか訪れたい国に。後にその会社のバイヤー、フリーランススタイリストになり、パリやミラノなどあらゆる海外に行きました。けれどなかなか行けなかったのがモロッコ。行きたい気持ちが募り、地図を何度も広げました(笑)。それぐらいモロッコに思いを馳せていました。
それから10年後の2002年、ようやく念願のモロッコへ。エスニックな国ですが、元フランス領土なので建物にもエスプリが効いていて、街はとてもおしゃれ! 伝統工芸の雑貨が街のあちらこちらに点在し、本当に色が溢れていました。街全体が可愛くて、感動の連続でしたね。それから17年、モロッコに通い続けています。
「ファティマ モロッコ」を立ち上げようと
決意したのは?
最初はただのツーリスト。まさか自分がモロッコ雑貨のブランドを立ち上げるとは思ってもいませんでした。けれど40歳の誕生日に自分を振り返りたいと、モロッコ全域を1カ月かけて回ったことがありました。その時です。「ファティマ モロッコを始めよう」と決意したのは。スタイリストとして働いていた時は、モロッコで小道具やアクセサリーを買ってきては衣装のポイントに。洋服にもはえるし、こんな小物が日本にもあればいいのにと常々思っていました。でも当時、日本にはバブーシュしかなくて、これは自分がやるしかないと発起。2005年からモロッコの知人に助けてもらい始動。2006年に「ファティマ モロッコ」が誕生しました。
異国での取引は大変でしたか?
私が目指したモロッコ雑貨は、ファッションに合うデザイン。モロッコの土臭さを抜きたかったので、オリジナルを作る必要がありました。そこで、現地で納期や品質管理をするモロッコ人を雇いました。その方はとても真面目でいい方。けれど、やはり育ってきた文化が違う。納品日を守ることも難しく、日本の厳しいチェックを抜けることができませんでした。
それで、日本市場を理解している日本人のパートナーが必要だと感じ、私の右腕となってくれるスタッフのハンティングをはじめました。探し出したのは、当時流行っていたブログから。モロッコ在住の日本人女性を10名ほどピックアップし、一人ひとりに声をかけてやり取りをさせてもらいました。今の素晴らしいパートナーと巡り会い、再スタートをきったのは、そこから1年後。もちろんそれからも色々ありました。手がけるのはモロッコ人。なかなか納期を守れなかったり、時にはお金を騙されたりすることもありました。
結局、すべての課題をクリアするため、自分たちで工房を作るという選択を迫られましたが、そこでモロッコの影を見ることに……。
モロッコの影とは?
モロッコはまだまだ男尊女卑の世界。例えば、バブーシュだと皮のカットや縫製は男性、刺繍などの細工を施すのが女性の仕事です。が、イスラム教のモロッコでは男女が同じ部屋で仕事を行うことは一切ありませんし、仕事のトップに立つのは男性。仕事は女性にも与えられていますが、その対価はツケにされて支払われないことが多いそうです。また、モロッコは一夫多妻制。夫にすぐに離婚されてしまった女性、夫が働かず苦労している女性が山のようにいるのです。30歳くらいになって婚期を逃して(法律上の結婚可能年齢は18歳。そのタイミングでの結婚が大半)、自立を余儀なくされた女性もいます。そんな彼女たちが生きるために一生懸命働いているのがモロッコの影なのです。
その現実に立ち向かい、
“女性支援”を行なっていると聞いています。
そんな女性たちのディテールを施す腕は一級品で、中にはラグジュアリーメゾンのアパレルに携わっているほどの女性もいます。まずはそんな女性を探し、安心して働ける工房を作りました。納期を守って、こちらの思いを汲みながら丁寧に制作してくれる女性に対し、商品と引き換えに対価を現金でお支払いしています。彼女たちは仕事を与えられ、私たちは納期内に素晴らしい商品を与えられる。共にwinwinの良好な関係を築いています。これからもその関係を続けたい。男性の影になってしまいがちな女性たちを支えたいと思っています。
モロッコを知るうちに“エコ”的な暮らしにも
感銘を受けたそうですね。
都会はかなり栄えたモロッコですが、砂漠やアトラス山脈を超えた南部はまだまだ田舎。昔ながらの生活から変わっていません。日本でもエコやロハスが流行っていますが、モロッコは生活自体がそのもの。意識せずともエコ的な生活を送っています。特にノマドや遊牧民は日の出とともに目覚め、日の沈みとともに1日を終える。季節や天気、月の満ち欠け、そして自然とともに生きているんです。ヤシの木ひとつとってもそう。広大な砂漠ではヤシの木があるところがオアシス。そこに住み、ヤシの木の葉でできた日陰で水を得て、実を食し、その葉をいずれはカゴなどにして生活に役立てる。自然の摂理で周り、大自然の中で生きている。そこに感銘を受け、影響を受けました。
そこから「ファティマ モロッコ」に
繋がったことはありますか?
彼らはその生活で成り立っています。生活を営んでいますから、そこを否定したくない。だから、私たちが展開するアイテムは少々の個体差があってもハンドメイドの”味”として、1、2cmのサイズ違いや許容範囲の持ち手の歪みは認めていただいています。もし、きっちりとした1mmも妥協を許さないとしたら1個売るために10個以上を捨てなくてはいけません。それでは本末転倒。個々の違いもモロッコの良さ。それをご理解くださるお客様に心を込めたアイテムをお届けし、モロッコに利益を還元しつつ伝統工芸を支えていきたいですね。
素敵なアイテムの数々。
インスピレーションの元は?
いろんなところで受けていますよ。カゴバッグでお話しすると、夏は40型、冬は20型作っていますから、東京で歩いている人やSNSなど、年中アンテナを張り巡らせています。モロッコも成長していますから、「えっ、こんなものも作れるようになったの!?」という新しい細工を披露してくれることも。だから、現地発信で新しいディテールが生まれることもあります。モロッコと日本の両方で繋がるもの。それを探求し続けています。
モロッコにまつわるコスメも
「フルールドファティマ」で展開。
こちらはどのような思い入れがあるのでしょう?
モロッコの女性は肌の露出や体のラインを出すことはNG。けれど、工房の女性も次第に気心知れて、ベールを取ってくれるように。すると、とても美しい髪、美しい肌が現れたのです。何を使っているのかをたずねるとモロッコの恵みとも言われている”アルガンオイル”でした。実際、紫外線の強いモロッコを訪れると、毎回アレルギーで肌が荒れていましたが、アルガンオイルを使いはじめてから、トラブルはほぼ無し。このすごさを日本人にも体験してほしい、日本にモロッコを紹介するにはアルガンオイルなしには語れないと思い、コスメラインもスタートしました。
日本で今売られているアルガンオイルの多くは、使いやすくするために濾過を重ね、とても軽いタッチ。けれどモロッコ本場のオイルはつけた感がすごくあって重い。香りもごま油に似ています。もはや全くの別物です。私はモロッコのアルガンオイルがあったからこそ、大きな肌トラブルに出会うことがありませんでした。みなさんにも体験してもらい、良さを感じてほしい。だから、日本人が使えるギリギリのラインまでしか濾過せず、モロッコで使うオイルに限りなく近い浸透力、保湿力、保水力を保ちました。
エコサートも取得していますよね。
モロッコで販売しているアルガンオイルはヤギの動物臭も強くて……。衛生面に不安を感じる方もいらっしゃると思います。なので、アルガンツリーを徹底管理している会社と契約。実際に農園も見て、本物かつ安心を求めました。そのほかの商品も砂漠の厳しい環境下で育ち、強い生命を持つサボテンオイルやダマスクローズ、レモンバーベナも用いながら商品開発を行っています。この4つを主成分として今後の展開も考えているところです。
最後に、モロッコに旅行にいくなら
どこがおすすめですか?
私はマラケシュが好きですが、目的によって行き先を変えるといいですね。雑貨好きならマラケシュですし、大自然や世界遺産を見たいならサハラ砂漠、青い街並みを楽しむならシャウエンです。でも1番最初は北部に位置するフェズがいいかも。イスラム王朝の都とし栄え、伝統工芸の発祥の街でもあります。京都みたいなところですね。料理も一番美味しいし、モロッコの基本を知ることができます。昔ながらの腕のいい職人が揃い、他人を受け入れない職人気質なところも京都を思わせます。モロッコは本当に魅力溢れる国です。今も仕事を兼ねて年に数回通っていますが、いまだ飽きることはありません。そして必ず見ていただきたいのがサンセット。砂漠、街、海辺どこからでも圧巻の美しさです。
モロッコの人々もとてもフレンドリー。行けば必ず好きになるはず。モロッコのすべてを好きになっていただけたらうれしく思います。
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リアルな使い方をご紹介!
おしゃれと実用にベストなカゴバッグ
夏も冬も! 長年愛せる名品です
「カゴは夏のイメージが強いですよね。けれど冬にカゴバッグを持つのもとってもおしゃれ! 冬感がなく使いにくいと感じるなら、ファーなどの冬素材を使ったデザインを選んだり、お手持ちのストールやマフラーをカゴバッグの上に。冬顔に変身しますので一気に使いやすくなりますよ。私は夏もストールをふんわり。自分らしさが出ますし、荷物の目隠しにも。エアコンで冷える時はさっと冷え防止アイテムにもなりますしね(笑)。カゴバッグとストール(マフラー)はセットが私の鉄板です。ちなみに、トレンチやコートとも相性がいいので是非お試しください」
使用感が出てきたカゴバッグは
インテリア小物にシフト!
「カゴってとても万能なんです。私の場合はファッション小物としてカゴバッグを活躍させた後は、インテリア小物に。だから私の家は家中カゴだらけ(笑)。クローゼットの1番下にカゴを並べて、収納がわりにしています。使い方は他にも! 子どものおもちゃ入れ、洗濯物カゴ、玄関のバブーシュ入れ、野菜入れ、新聞や雑誌入れ、プランター受けなど色々と使えます。デザインは違っていても、ベースが同じ素材なので統一感は自然と出てきます。ちなみに、カゴって水洗いできるんです。水洗いをして、陰干しして使い続けてください」
自分が使いたいものを商品化。
だからコスメは全部、私の愛用品
「私が欲しいものだけを作ったので、実際どのアイテムもすべて使っています。なかでもお気に入りはエッセンスオイル、モイストキープアクアジェル、プレシャスオイルスティックは私の必需品。忘れたらビビって家に取りに戻るぐらい(笑)。手放せません。エッセンスオイルは貯水力を高めるので乾燥が気になったら即! その上からアクアジェルを重ねれば完璧です。スティックはほうれい線や目元に。夕方、疲れ顔になってきたら使用。すると一気に顔が蘇るんですよね。ほかにも家ではアルガンオイルをマッサージに愛用。カッサとのW使いでむくみケアを徹底しています。髪にも爪にも使えるから便利ですね。一家に1本!」
大原 真樹
2006年に株式会社ファティマを設立。アパレル会社のバイヤー、芸能人のスタイリストの経験を活かし、モロッコ雑貨ブランド「ファティマ モロッコ」とコスメライン「フルール ドファティマ」のディレクターとして活躍。27歳でモロッコに魅了され、その後は毎年訪問。今では毎年6-7回渡り、年間100日以上をモロッコで過ごす。幅広い女性にモロッコの伝統工芸を愛用してもらうべく、よりスタイリッシュで新しいデザインを毎シーズン豊富に展開中。